今週のお題「好きなスポーツ」。
前回の記事のつづきです。
5.それぞれの役割
1走:爆発力の黄レンジャー
黄レンジャーは、瞬発力・爆発力が最大の魅力である砲丸選手だ。
わたしも冗談まじりで砲丸を投げてみたことがあるがむずかしい。
何が難しいって、ほとんど「静」の状態から一気に「動」に転じなければいけない点だ。
半径1mほどのサークルの中から動けないので、助走は微々たる動きでしかとれない。
だから黄レンジャーはいつも「白筋(速筋)」を鍛えていた。
「白筋(速筋)」と「赤筋(遅筋)」は収縮速度の違いから、それぞれそう呼ばれている。
マラソン選手なんかは、長い間収縮することが出来て長時間の持続的な運動を支える筋肉=赤筋(遅筋)を鍛えている。
監督が組む練習メニューもそういう類のものが必然的に多かった。
ちなみに黄レンジャーは部内イチの筋肉オタクでもあった(笑)。
この身体のつくりは、ヨンケイの1走・スターターとの相性は抜群にいい。
「ピストルの音と同時に走り出せ!」
これがスターターの最大のミッションだからだ。
実際、黄レンジャーのスタートダッシュはかなり速かった。
だけど黄レンジャーには最大の弱点があった。
白筋(速筋)を鍛えすぎたのか、
持久力がめちゃめちゃになかった。
マラソン競技はおろか、100m走ですら後半でへばってしまうタイプだった。
50m走ならアカレンジャー、アオレンジャーとも十分に戦えるレベルなのに。
この最大の弱点を補うのが、我が校の静かなるエース・アオレンジャーだ。
2走:エース、アオレンジャー
アオレンジャーは4人の中で一番100m走が速いエーススプリンターだ。
専門も100m、200m走であり、ホンモノのプロだ。
学校の運動会だとアンカーにエースを配置しがちだが、陸上界では実はそうじゃない。
ヨンケイではどのチームも2走にエースを配置することがほとんどだ。
理由は2つある。
1つは、2走が走るコースが直線コースだからだ。
ヨンケイは400mトラックを一周するコースなので、必然的にカーブコースが存在する。
そんな中、2走が走る区間は the 直線。
加速がめちゃめちゃしやすい為、シンプルなスピード争いになる区間だ。
そして2走にエースを配置するもう1つの理由は、4人の中で一番長い距離を走ることが出来るから(最大130m)。
各走者の間には「テイクオーバーゾーン」と呼ばれるバトンパスの区域が30mずつ配置されている。
この30mを上手く使えば、2走は100mといわず130m走ることが出来るのだ。
細かいことを省いてザックリ説明すると、
「1走から出来るだけ早くバトンを受け取り、3走へのバトンパスをギリギリまで引っ張ることが出来れば」130m走ることが出来る。
これはデカい。
エースの走力で30mも余計に走ってくれるとタイムはかなり縮められる。
ヨンケイは0.01秒を争う競技だからだ。
だけど2走に130m走ってもらう為には、それを実現するためのバトンパスの技術が必須となる。
バトンパスは、いかにトップスピードを落とさずに繋いでいくかだけでも難しいのに、こんな細かいことまで考えながらやるのは至難の業なのだ。
1走の黄レンジャーは間違いなくへばった状態でエースにバトンを持ってくる。
トップスピードが落ちている状態のため、こちらから早々にバトンを受け取ることはそう難しくはない。
3走:バランスのミドレンジャー
そもそもだが4人の中で一番やる気がない。
陸上熱も、勝利への執念も希薄だ。
非常にマイペースで部活もこそこそとよくサボっている(そしてアカレンジャーによく怒られている)。
そんな一見ヨンケイに無縁そうなミドレンジャーが選ばれた理由は、一言でいうと「安定感とバランス力に長けているから」。
ヨンケイにおける3走の役割だが、ここは4人の中でも走力が劣っている選手が配置されやすい。
というのも、ここは2走のような単純な走力合戦ではないからだ。
技術的な意味で、実はいちばん難しいポジションと言われている。
理由は2つある。
最大の難所は、4人の中で唯一、直線を走ってくる選手からバトンを受け取る点。
3走以外は、カーブを走って来た選手からバトン受け取る。
これは視覚での距離感が掴みやすく、走り出すタイミングの微調整がまだしやすい。
一方3走は、2走のエースがトップスピードでまっすぐ自分に迫ってくる中、タイミングを見計らって走り出さないといけない。
これは距離感をはかるのがかなり難しい。
でもこのテクニカルポジションが意外にも走り幅跳びとの相性が良かった。
走り幅跳び選手は自分の走りをコントロールすることに慣れている。
走り幅跳びが、常に「安定した加速」が必要とされる競技だからだ。
走り幅跳びは0.1cmをせめぎ合う競技。
助走でしっかり加速しつつも、いかに踏み切りラインにプラスマイナスゼロで寄せてジャンプ出来るかがミソなのだ。
集中力を極限に高めて、
歩数、歩幅、リズム、スピード
これらを常に安定させる必要がある。
この辺りの技術が、難関のバトンパスポジションを担うのにフィットするという算段。
そしてもう1つ3走が難しいと言われる理由は、この難しいバトンパスをカーブコースの中で行わないといけない点だ。
が、これもミドレンジャーと相性がよかった。
というのも、ミドレンジャーは右足で踏み切るジャンパーだった。
これは反時計回りのトラックでは有利。
外側になる右足の脚力が強いのでコーナリングがしやすい身体なのだ。
ミドレンジャーは黄レンジャーのように、持久力がないという訳ではないが、走力にはやはり欠ける点が弱点だった。
その弱点を、安定したバトンパス技術で埋める作戦。
それは暗にアオレンジャーをギリギリまでトップスピードで走らせることを意味していた。
「お前は順位を上げようとか考えるな。
エースのスピードを殺さずにアンカーに届けることが最重要ミッションだ。」
監督からもそう釘を刺された。
4走:心が燃えてるアカレンジャー
アカレンジャーは名実ともにみんなのリーダーだ。
個人としての走力も高い。
100m走ではアオレンジャーには劣るものの、スプリンターとしても充分。
マラソンランナーとしても活躍出来るバランスのいい能力を持っている。
のちに部長も努めた、真面目で努力家で、やる気も能力もある the アカレンジャー。
ヨンケイの4走を努めるのに大事なのは「勝負強さ」。
走力と同じくらいにハートの強さが大事になってくる。
ヨンケイは陸上の中でも華型競技なのだが、その中でも一番会場が沸くのが4走が走り出す瞬間である。
最後のコーナーを抜けて直線になったところで、一気に全体の順位が明るみになるのだ。
この最後の競り合いになんとしてでも我こそは勝つ!!という気持ちがなければ、気迫負けする。
そして3走ミドレンジャーの個人的主観としては、やはりラストにリーダーが待っててくれるのは何とも心強いものがあった。
ヨンケイの空気感に慣れていないミドレンジャーはレース中とにかく不安がいっぱいなのだ。
そんな中3走で順位まで落とそうものなら、申し訳なさも相まって心が潰れそうになる。豆腐メンタルなのである。
3走がどんな順位で走ってこようが、アカレンジャーはいつでも大声を張り上げてミドレンジャーを勇気付けながら待っててくれるのだ。
普段はアカレンジャーのこのブレない暑苦しさと爽やかさを少々鬱陶しくも感じるわたしだった。
だけどヨンケイを通して、アカレンジャーのこの真っ直ぐさは何ものにも変えられない最大の魅力だと認めざるを得なかった。
6.人生はヨンケイだ
結局この4レンジャーによる即席チームはいい線までいった。
この話は兵庫県下でのはなしなのだが、兵庫県は陸上界ナンバーワン都道府県らしい。
下記の記事にて統計が取られている。
編集部コラム「2019年度 陸上界ナンバーワン都道府県は?」 | 月陸Online|月刊陸上競技 (rikujyokyogi.co.jp)
そんな中で県大会に出場出来たのだ。
県大会でどこまでの記録を残したか、
最後はどんな風に負けたのか、
そこまで細かいことは正直一切覚えていない。
何十年経っても覚えていることは、自分みたいなやつでも貢献出来る場所があった、という感動だけだ。
凸凹の人間でもいいんだ。
一番大切なのは良さを見つけて活かすこと、伸ばすこと。
これは今でも自分の中の大事な人生論として刻まれている。
そういう大事なことを教えてくれたのがヨンケイだ。
こんな風に胸アツでヨンケイのことを散々語ってきたが、
やっぱり陸上は好きではない。
テレビで陸上競技が放映されていたとしても観ない。
人生やり直せるなら陸上部には絶対に入部しない(まちがいなく軽音楽部に入る)。
だけど、6000文字程度よゆうで語ってしまうくらい特別な何かがある。
はてなブログの今週のお題の「今週」が過ぎてしまっても尚、これだけは投稿したいと思わせる何かがある。
おしまいっ。
*うらりえ*